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救いの神

緊張の反動で一日だれだれどよ~んとしていた午後6時前、お嬢からメール。「自転車もってってくれた?」――ぅぅぅ、そういえば、パンクしてるから自転車屋さんにもってってとか言ってたような……。完璧、忘れていた。

帰宅と同時に、怒濤のような文句の嵐。

……そりゃね、忘れたお母さまが悪うございますよ。でもそんなものの言い方をしたら、お母さまはへそを曲げてしまいましてよ。ふん、曲げてやるもん。

もうすぐ十八年になる人生で、お嬢が最高にプレッシャーにかかる時期のただなかにいることはわかっているし(昨日が大学入試の第一弾で、今日・明日は高校の卒業試験で、あさってから本命入試が三連ちゃん)、学校に行くにも入試に行くにも、自転車が必要なこともわかっている。

でも、お母さまはへそを曲げてしまいました。

だいたい、ふだんからもの言いがきつい(以前からちょっと注意しておく必要があると思っていた)←母の詭弁
おまけに、自分で行かない理由が気にいらん(3年で4回パンクしたのが恥ずかしいなんて自意識過剰だよ)←乙女心がわからん
くわえて、爾後の方策を自分で探そうとしない(ほかの自転車さん探してよって、人にたよるなよ)←単に母はめんどくさい

ああ、入試前の娘にかわいそうなことをして……と思いつつ、曲がったへそはもどらない。夕食前のリビングにこのうえなく険悪な空気がただよう。そのとき、

「道具があったかなぁ」

と、のんきなだんなの声がして、救いの神が登場。だんなは道具を引っぱりだしてくると、自転車をもってあがっておいでとお嬢に言った。外は真っ暗だし寒いし小雨もようなので、リビングに新聞を敷きつめる。15分後、パンクは直った。わたしはお嬢にごめんねぇと言い、みなでなごやかに夕餉の食卓を囲んだ。

あとでこそっとだんなに聞くと、険悪なのはいやだしねぇ、あなたはきっと後に引かないしねぇ。

わたしはやっぱりだんなに頭が上がりましぇん……。

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