『アルペジオ』by 新津きよみ

 身長150cm足らずと小柄で華奢な由布子は、ひょんなことから手に入れた拳銃に勇気を得て、巨体の夫が暴力をふるう家を飛び出した。だが行くあてもなく途方にくれていると、ジムのインストラクターで女性ながら180cm近い長身の逸美に拾われる。

 実は逸美にも、銃を突きつけて土下座させてやりたい相手がおり、ふたりはとりあえず試し撃ちをしに行く。その道中、由布子のかつての恋人で、破局をきっかけに警察に入り、今は音楽隊でクラリネットを吹いている良介が、偶然由布子の姿を見かけていた。

 うーん、正直プロットがてんでバラバラで、最後は何とかまとめてあるものの、あの話もこの話も拡散してしまった感じ。

 副題には「彼女の拳銃 彼のクラリネット」とありながら、音楽と拳銃を絡めた話が描きたいのか、DVとそれにまつわる心の揺れを描きたいのか、由布子と同じく小柄な父親や良介を登場させて、「小さいから弱い」という甘えに対する目覚めを描きたいのか、悩んでしまった。もうちょっと狭く、深く、掘り下げた方が副題も生きたような気がする。物足りなさが残った。

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『ヒート アイランド』by 垣根涼介

 これはハードボイルド、になるのだろうか? にしては登場人物がちょと若すぎるような気もするが(^^;)。

 舞台は東京・渋谷あたり?(土地勘がないからようわからん) アキは、片腕のカオル、チーマーのかしら4人とともにグループ「雅」を結成し、月数回ファイト・ショーを開いて19歳ながら合法に荒稼ぎしていた。腕力自慢のかしらたちを半殺しの目に合わせて従えたアキには、実質、数百人のチーマーを動かすことができた。

 ある日「雅」のメンバーのひとりが、ボストンバッグに入った数千万という大金を持ち込んできた。それは、大阪から進出してきたヤクザが主催するカジノで強奪された、億に近い金の一部と判明する。その警察沙汰になっていない非合法の大金をめぐって、アキたちは、強奪犯、大阪のヤクザ、地元のヤクザから狙われることになる。

 その道のプロである強奪犯の柿沢と桃井、泥臭いことこのうえないヤクザたちを向こうにまわして、事態の先の先まで冷静に読み、仲間を最大限に生かして的確に立ち回るアキはなかなかのものである。やや血なまぐさいのが難点だが、みごとに大人を手玉に取るあたりは痛快なので、大目に見るか(^^;)。続編(大人になったアキ)に会いたいと思うのはわたしだけだろうか。

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『黄昏の百合の骨』by 恩田陸

 初めて読みました。>恩田陸 予備知識皆無だったので、最後の展開には、ほよ~~とちょとビックリ(^^;)。

 冒頭にはある人物の独白、その後は、何通かの、あまりにふつうゆえにかえって意味がありそうに感じられる手紙、とけっこう造りは凝っているのだけど、最終的にあまり意味がないような気もした(^^;)。

 舞台は、曰く付きの山手の洋館。育ての親である祖母が亡くなったあと、祖母の遺言で1年間その洋館に住まなくてはいけない女子高生の理瀬と、そこに同居する二人の叔母、祖母の一周忌に帰ってくる兄弟同然の従兄弟たち、近くに住む理瀬の友人、などを中心に物語は進む。

 穏やかな話のようでありながら、常に靄のように影がかかっていて、得体の知れない不気味な雰囲気が漂っている。ラストはなかなか衝撃的だが、だけど、もうちょっとちがう流れを持ってきた方がラストが生きたような気もすかな……(^^;)。

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西の魔女が死んだ』by梨木 香歩

 うーんと、どちらかというと積極的に手を出すタイプの本ではないのだが(^^;)、あちこちでタイトルを見かけたのと、この作者のこの作品がかなり誉めてあったので、ちょろりと覗いてみた。

 主人公は、いろいろと考えるが故にクラスから浮いてしまった中学生の少女。舞台は、鶏を飼い、畑で野菜を育ててのんびりと暮らす田舎のおばあちゃん=西の魔女の家だが、さすがにイギリス人のおばあちゃんはハイカラで、野菜のなかにはミントやセージがあるし、いり卵といいながらバターが登場する。

 文体は軽やかで情景描写が美しく、日本語ぺらぺらというイギリス人のおばあちゃんの口調が、へんに砕けていないというか、きちんとしているのが気持ちがいい。口調ひとつで凛とした人柄が透けて見えるのだがら、やっぱりセリフは恐ろしい。

 新聞の相談コーナーに、「高校生の娘が反抗的で悲しい。子供をかまわない両親の代わりに口やかましく小言を言いすぎたせいだろうか……」という投書があったが、むずかしい時期の子供からそれなりに慕われて一目置かれるためには、おばあちゃんはかなり賢くなくてはならない。子供を納得させられるだけの道を示せること、それを自ら態度で実践できること、子供の可能性を心から信じてやれること、そして子供がわれ知らず乗せられてしまうようなユーモアを持っていること、などだろうか。

 なんのことはない、いい親になる条件にも匹敵するようだ(^^;)。

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ピリオド』乃南アサ

2段組、360ページをひと晩で読了(^^;)。おもしろかった!

フリーカメラマンの葉子は40歳。故郷を捨て、夫と別れ、編集者の杉浦と不倫をしながら、ぬるま湯のような毎日を送っていた。唯一の肉親である兄は、同時に葉子が故郷を捨てた直接の理由ともいえるほど、ねじくれて救いのない性格をしているが、余命幾ばくもない。兄の妻の志乃は葉子の同級生で、中3と高3の子供を抱えて筆舌に尽くしがたい苦労をしており、葉子はいつも一抹の自己嫌悪を覚えている。

ある日、志乃に頼み込まれて一時的に甥を居候させている葉子のもとに、警察がやってくる。杉浦の妻が刺し殺されたというのだ。数日前に杉浦は妻から三行半をたたきつけられて激怒していた。杉浦のことが気にかかる一方で、葉子のもとには甥と入れ替わるように、姪が家出をして頼ってきた。レイプと中絶というつらい体験をしている姪は、どこか危うくて邪険に扱うわけにはいかない。

という具合で、葉子の身辺はにわかにあわただしくなるのだが、カメラマンの葉子が冒頭で撮影する「外壁のない家」を、葉子の田舎の「見捨てられた実家」に重ねながら、年齢相応かつ、それなりに真摯な内省についつい引き込まれてしまう。

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法務教官 夏川凛子

作者の江川晴は、長いあいだ看護婦として勤務したのち、作家に転じた人。『老人病棟―訪問看護婦物語』『看護婦物語』『外科東病棟』『産婦人科病棟』『救急外来』『婦長物語』など、体験を踏まえた作品が多い。

今回の舞台は、少年院などの厚生施設に入れられている少年が、病気になったときに送り込まれる施設。法務教官=看護婦の凛子は、さまざまな非行少年=患者と関わりを持っていく。というものの責任の重さ、その存在の圧倒的な大きさを深く考えさせられる。

少年たちを更正させるのは、賽の河原に石を積むように空しい作業で、凛子が何度もくじけそうになるのがよくわかる。それだけに、「親が十数年かけて作り上げた非行少年を、ほんの数年で更正させられると思うのは傲りだ」という医師の言葉が重みを持つ。

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不機嫌な果実』林真理子

えーと、「あっそう」という感じ(^^;)。

おそらくこういう女性は、実際に存在するのだろう。多数を占めるのか少数派なのか、ちょと想像もつかないが。どこまでいっても自分だけに囚われ、足ることを知らない未熟な主人公は、読んでいてひたすら空しい。どうすればこういう大人ができあがるのか、アンタこの先どうするの、と言いたくなるけど、しょせん物語だと割り切れなさそうな現実が重苦しい。

現実の一側面を描いてあるのだろうけど、こういう読後感はやり切れない。


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